海苔漁師の日常〜10月編〜
今回は『海苔漁師の日常〜10月編〜』を紹介します。
元サラリーマンだった私は22年8月から宮城県七ヶ浜の海苔漁師として新たな人生を歩み始めました。
陸から海へ、職種も全く異なるものですが転職して3ヶ月が経ちました。
海苔養殖は冬季が本格シーズンですが、8月から作業は始まっています。
8月、9月の海苔漁師の作業内容も別記事で紹介しています。まだ読んでない方は是非とも一読ください。
今回は10月編です!是非とも一読ください!
10月は『本養殖開始の月』
9月は松島湾での海苔網育苗の準備や作業がメインでした。
10月は育苗の継続と育った網を本養殖に移す準備をする月となりました。
作業内容は時系列に沿って詳しく説明します。
10月上旬
育苗の継続:網洗い&干出
10月上旬は9月に始まった育苗作業を継続して行います。
毎日松島湾に行き、海苔網の網洗い&干出を行い海苔芽の成長を促します。
10月1週目時点では海苔芽を肉眼で確認することはできませんでした。
9月編で網洗い&干出の説明はしているので省きますが、松島湾に海苔網を設置して10日以上経過すると網がかなり汚れてきます。
毎日同じ作業の繰り返しですが、数日網洗いをしなかったら海苔芽は絶対に育たないと思うくらい汚くなります。笑
海苔網の成長状況確認
10月2週目に入ると松島湾に海苔網を設置してから14日以上が経過します。
海苔芽は様々な要素が影響しますが、およそ20日前後で海苔芽が見えてくるようになります。
海苔芽が成長すると海苔網が黒っぽくなるのですが、素人や初心者には汚れとの区別がかなり困難です。
親方の経験から15日ごろになると若干海苔芽らしきものが見えるようなのですが、今年は見えないため七ヶ浜にある研究室で成長確認をしてきました。
七ヶ浜には漁業組合の施設内に研究室が入っており、研究員も勤務してます。
そのため自分達の海苔網を少し切って持っていけば顕微鏡で見て、状況を説明してくれます。
今回見てもらった結果、問題なく成長いるとのことでした。(10月2週目時点)
写真5は海苔の遺伝子ですが、細胞分裂を繰り返して成長しているのが分かります。
最初は1つの遺伝子が2倍ずつ分裂して増え、10月2週目時点で16個〜32個まで増えていました。
10月中旬
海苔芽の成長
10月1週目時点では成長が乏しかった海苔網が、2週目に入ると急成長を始め肉眼でも確認することができるようになります。
成長の要素は様々なため一概には言えませんが、水温が下がったのが大きな要因と考えられます。
海苔芽が成長する水温は20度前後と言われており、成長が進むにつれて水温が下がるのが理想と言われています。
写真2枚を比較してみてください。海苔芽が出てるのが分かりますか?
かな〜り分かりにくいのですが、写真7の網には若干黒い糸状のものが付いてます。
この黒い糸状のものが海苔芽になります。
この状態になってくると一気に成長が進みます。
2週目の後半には海苔網も黒くなり、肉眼で海苔芽もはっきり見えるようになります。
この状態になったら網を回収するタイミングが近いです。
10月上旬と中旬の写真を比較してもらうと分かりますが、何も見えない網から海苔芽が成長しました。
海苔芽が見えた時に私は思わず声を出して喜んでしまいました。笑
海苔網の回収
成長が進んだ海苔網は回収し、港に戻ってから陸で天日干しをして乾燥させます。
乾燥させた海苔網は冷凍庫に入れ、沿岸での本養殖まで保管しておきます。
海苔網は雨水に触れてしまうと海苔の遺伝子が死んでしまうため、回収する日は天候に左右されます。
幸いにも10月中旬は天候に恵まれた日が多く、連日回収して天日干しをすることができました。
天日干しの際には重なっている海苔網をバラして全体が乾燥するように置きます。
乾燥までの時間は30分〜2時間以上と天候によってまちまちですが、海の上での干出よりは段違いに早く乾きます。
地面の照り返しがこんなにも暖かいのかと思った瞬間です。笑
乾燥した海苔網は袋に入れて冷凍庫に入れて保管しておきます。
10月下旬
沖合漁場の瀬分け
松島湾での育苗が終われば沿岸漁場での本養殖が始まります。
そのため中旬後半から下旬の間に沿岸漁場の区画整理(瀬分け)を実施します。
漁場は農家のように明確な境界線がないため自分達でGPSを活用し区画を分ける必要があります。
境界線には浮標を設置して海苔屋ごとに養殖場所を取り決めて本養殖を行います。
浮標には土嚢が付いており位置がずれないようになっています。
松島湾とのお別れ
松島湾での育苗作業は10月中旬でほとんどの海苔屋が終了します。
今年は台風・水温の影響で育苗の開始が遅れたため例年より期間が伸びたようです。
海苔網を設置していた筏(いかだ)は10月24日以降に撤去が可能となります。
私たちは人数が少ないため筏の撤去をせずに本養殖の準備に入ります。そのため松島湾とはしばらくお別れとなります。
松島湾での作業最終日は天気が良かったので綺麗な朝日を最後に見ることができました。
沿岸漁場での作業開始
沿岸漁場の瀬分けが終われば海苔屋ごとに本養殖が始まります。
私たちも天気を見ながら筏設置・海苔網展開を行います。
松島湾とは違い、沿岸は波のうねりがあり最初の作業では船酔いしました。苦笑
筏の設置は一艘の船に4人が乗船して行います。新米の私は細かい指示を頂きながら筏の設置をしました。
設置した筏に海苔網を展開し、本養殖開始になります。
沿岸では海苔の育ちもよく網を展開して3日後には成長して伸びていました。
10月下旬の仙台沖の水温は17度前後であり、海苔が育つには最適な水温です。
11月以降はさらに気温・水温が下がります。海苔は成長と共に水温が下がることが好ましいため、海苔養殖が冬季に行われるのも納得がいきます。
10月からは本養殖開始!!
今回は『海苔漁師の日常〜10月編〜』を紹介しました。
松島湾で育苗した海苔網を仙台沿岸の漁場に持っていき、本格的に養殖が始まりました。
これからは成長した海苔は摘み取り、出荷作業も順次はじまります。
皆さんの手元に最高の海苔をお届けできるよう今後もしっかり作業していきます‼︎
今後も海苔漁師の日常を更新していくので是非一読ください。
また次回の記事でお会いしましょう。それでは〜